知られざる軽貨物業界の裏側【多重下請けの実態と偽装請負の見分け方】

「同じ現場で働いているのに、なぜこんなに収入が違うの?」

たとえば、荷主から2万2000円で発注された仕事。一次請けなら手取り2万円ですが、二次、三次と業者が増えるごとに、同じ現場で働いているのに、あなたの取り分は確実に減っていきます。

同じ現場でも、所属する運送会社によって単価が違う事も珍しくはありません。


なぜそんなことが起きるのか、知っておくべき重要な構造があります。


届出だけで参入できる軽貨物業界には、多重下請けによる報酬の目減りや、一次請けを持たないのに運送会社を装う斡旋業者など、表面からは見えない多重下請け問題が存在するからです。

たとえば、運送会社と思って契約したら実は斡旋業者だった。「必ず紹介します」と言われた仕事が来ない。次々と単価の安い仕事を紹介される…。
こういったトラブルに巻き込まれるドライバーが後を絶ちません。

この記事では、良質な運送会社の見分け方と、安定した収入を得るための具体的な方法を解説します。業界の構造を理解し、適切な委託先を選ぶことで、あなたも持続可能な軽貨物ドライバーとしてのキャリアを築くことができます。

【この記事でわかること】

・運送会社を装う斡旋業者の見分け方
・多重下請け構造の実態
・良質な運送会社の特徴

この記事を読めば、業界の構造を理解し、良質な委託先を見分けるポイントがわかります。これから参入する方はもちろん、現在孫請けで働いている方の取引先の見直しにも役立ちます。

目次

第1章:業界構造の基本を知る

軽貨物業界の基本と問題点

「そもそも軽貨物業界って、どんな仕組みなの?」

軽貨物運送業は、許可制ではなく届出制の業界です。必要な届出さえ済ませれば、誰でも参入できる手軽さが特徴です。しかし、この手軽さが様々な問題を生んでいます。

多重下請けの仕組みと実態

荷主からドライバーまでの流れを見ていきましょう。

例えば22,000円の仕事の場合

  • 荷主支払額:22,000円
  • 一次請け:1,500円
  • 二次請け:2,000円
  • 三次請け:2,500円
    を取り、ドライバーの手取りは16,000円となります。

このように、仲介業者が増えるほど、あなたの取り分は確実に減っていきます。22,000円の仕事が、あなたの手元には16,000円。つまり、中間マージンとして6,000円も減額されているのです。

そして注意したいのが、「ロイヤリティなし」「手数料15%だけ」と言いながら、このように既に複数の会社でマージンが引かれた金額をベースに、さらに手数料を取るケースもあるということです。

このような実態を理解した上で、具体的な案件内容と支払い条件を確認することが重要です。

運送会社を装う斡旋業者の存在

さらに深刻な問題が、一次請けを持たないのに運送会社を装う斡旋業者の存在です。これらの業者の特徴は明確です。

  • 荷主との直接契約がない
  • オフィスは間借り状態
  • 研修制度が存在しない

にもかかわらず、あたかも本物の運送会社であるかのように装い、「すぐに稼げる」「仕事はたくさんある」と、ドライバーを募集します。

この構造を理解することが、良質な委託先を見つける第一歩となります。次章では、具体的な見分け方を解説していきます。

第2章:良い委託先の見分け方

「良い会社を選びたいけど、どうやって見分ければいいの?」

実は、信頼できる運送会社には明確な特徴があります。面談時の確認ポイントを具体的に見ていきましょう。

実運送体制を確認する

実運送体制とは、会社が実際に配送管理業務を行っているかどうかを指します。「仕事を紹介するだけ」の会社と、実際に配送を管理している会社では、大きな違いがあります。

正規のオフィスがあり、実際に社員が出入りし、日常的に配送管理業務が行われていることが重要です。面談場所がカフェなど公共の場所だったり、レンタルオフィスの間借りだったりする場合は要注意。これは実運送体制がない可能性を示す危険信号となります。

研修制度をチェックする

信頼できる会社では、新人ドライバーへの実践的な研修プログラムが用意されています。実際の配送ルートでの添乗研修があり、配送業務の基本的な流れから、伝票処理や報告方法、トラブル時の対応方法まで、体系的に準備されています。

「すぐに稼げます」「研修なしで始められます」という案内は、逆に要注意です。これは実務経験のない会社である可能性を示唆しています。

支払い条件の透明性を見る

信頼できる会社では、手数料や報酬体系が明確で、契約書にもその詳細が明記されています。基本単価、手数料率、支払日、締め日など、すべての条件が書面で明確に示されます。

「支払いは相談」「売上に応じて」といったあいまいな表現は使われません。また、支払いイトが極端に長い(2ヶ月以上)場合も注意が必要です。

トラブル対応の体制を確認する

実際の運送業務では、予期せぬトラブルが発生することもあります。信頼できる会社では、緊急時の連絡体制や、代替ドライバーの手配、事故時のサポート、クレーム対応の方法が明確に定められています。

確認すべき重要ポイント

  • 実運送体制の有無
  • 研修制度の内容
  • 支払い条件の明確さ
  • トラブル時のサポート体制

これらの特徴は、実は面談時の簡単な質問で見極めることができます。「具体的にどんな研修をするんですか?」「支払い条件を教えてください」といった素直な質問で、会社の本質が見えてきます。

次章では、逆に注意すべき会社の特徴について詳しく見ていきましょう。

第3章:要注意な会社の特徴

「信頼できる運送会社の見分け方は分かったけど、逆にどんな会社に気をつければいいの?」

ここでは、要注意な会社の典型的な特徴を見ていきましょう。

面談時の不自然な対応

まず注目すべきは面談時の様子です。正規の事務所を持たず、カフェなどで面談を行う会社には要注意が必要です。また、「今なら特別に」「これは他の人には言わないで」といった営業トークが多いのも危険信号です。

契約を急かす態度

「今すぐ決めてください」「この条件は今日だけ」。契約を急かす会社は要注意です。信頼できる会社は、あなたの検討時間を十分に確保します。むしろ、会社の体制や仕事の内容をしっかり理解してから契約するよう促します。

あいまいな支払い条件

「売上に応じて変動」「実績で上がります」。このように支払い条件があいまいなのは要注意です。とくに「他のドライバーより高い単価だから口外禁止」という言葉は、逆に単価が低い可能性を示唆しています。

不明確な仕事内容

「仕事はたくさんあります」と言うだけで、具体的な配送エリアや案件の種類を明確に説明できないのも不安な兆候です。配送の現場を持たない斡旋業者に多い特徴です。

SNSで案件を探してる

過度な制限条件

「3ヶ月は辞められない」「違約金30万円」。こうした過度な制限条項がある契約書も要注意です。また、「同業他社での就業禁止」など、あなたの行動を必要以上に制限する条項にも気をつける必要があります。

研修制度の不在

「経験者なら研修不要」「すぐに稼げます」。研修制度が存在しない、もしくは形だけの研修しかない会社は、実際の配送業務の経験が乏しい可能性があります。

見分けるための重要ポイント

  • 面談場所が不自然
  • 契約を急かす態度
  • あいまいな支払い条件
  • 不明確な仕事内容
  • 過度な制限条項
  • 研修制度の不在

これらの特徴は、ほとんどの場合、複数組み合わさって現れます。一つでも当てはまる会社があれば、慎重な判断が必要です。

次章では、このような会社を具体的にどう見分けるか、確認方法を詳しく解説します。

第4章:具体的な確認方法

「要注意な会社の特徴は分かった。でも、実際にどうやって確認すればいいの?」

面談の前に、まず会社のSNSをチェックしましょう。実は、ここに重要なヒントが隠されています。

事前確認:会社のSNSをチェックする

SNSを見れば、軽貨物業界の構造的な問題が見えてきます。本来、運送会社は荷主から直接仕事を受注し、それを処理するためにドライバーを募集するべきです。

しかし実際には

  • ドライバーだけを先に集める
  • 仕事を探すためにSNSを頻繁に利用
  • お互いに仕事を融通しあう

このような状況が日常的に見られます。

良い会社のSNS投稿:
「○○エリアの配送ドライバー募集。案件:△△スーパー店舗配送」
このように、具体的な案件があり、それに対してドライバーを募集している会社は安心です。

要注意なSNSの特徴:

  • 「軽貨物ドライバー募集!高収入可能!」
  • 「未経験者大歓迎!すぐに稼げます!」
    具体的な案件の説明がなく、ドライバーの募集だけを行う投稿。

さらに深刻なのが:

  • 「仕事探してます」という投稿
  • 軽貨物関連のグループに多数所属
  • 仕事の紹介や仲介を呼びかける投稿

これらは届出制という参入障壁の低さが生んだ構造的問題とも言えます。実態を持たない業者が容易に参入でき、結果としてドライバーの労働条件が悪化していく。このような業界の負の連鎖を、SNSが如実に映し出しているのです。

会社の本質を確認する

面談時の質問で、会社の本質は必ず見えてきます。まずは、この質問から始めましょう。

「御社は一次請けですか?」
この質問への反応で、会社の性質が見えてきます。

一次請けの場合は「はい、○○社から直接受注しています」「主要取引先は△△社です」と、具体的な取引先名を挙げられるのが特徴です。

一方で要注意なのは「色々な会社と取引があります」「たくさんの仕事がありますよ」と、具体的な取引先を明かさずあいまいな返答に終始する場合です。

業務内容を具体的に聞く

「どんな配送案件がありますか?」
この質問は会社の実態を見抜くポイントになります。

一次請けの典型的な回答:
「○○スーパーの店舗配送です。」
「宅配便の個人宅配送と、△△商事様の定期便を扱っています。」
具体的な取引先と案件内容が示されます。

要注意な回答:
「案件は色々ありますよ」
「宅配もあれば企業配送もあります」
「仕事はたくさんありますから」

実はこれらの回答には大きな危険が隠されています。契約書を交わした後、他の運送会社に連絡し案件を探してを回すことも。最悪の場合、SNSなどで案件を探し始める会社もあります。

結果として紹介される仕事は、誰も取りたがらない単価の安い案件ばかり。「たくさんの仕事がある」という言葉の裏で、実は仕事探しからスタート。見つかった仕事も条件の悪い案件が中心、というのが現実なのです。

報酬体系を確認する

「1日でどのくらいの売上になりますか?」「ロイヤリティはどうなっていますか?」
この質問への回答で会社の本質が見えてきます。

一次請けの典型的な回答:
「Aルートは2万5000円、Bルートは2万円です」
「19時終わりが1万5000円、17時終わりが1万2000円です」
具体的な金額と仕事内容が明確です。

「手数料は15%です。」
10%〜15%が業界の一般的な水準です。

要注意な回答:
「高単価の案件もありますよ」
「頑張れば月収50万円も可能です」
「他のドライバーさんより高い単価をご用意します」
「ロイヤリティなしです」

実はこれらの回答には大きな落とし穴があります。「ロイヤリティなし」と言いながら、既に卸値から手数料を抜いているケースも。「手数料は15%」と言われても、提示された金額が既に抜いてある。他社より低いこともあります。つまり、二重抜きで実質20%を超える手数料となっているのです。

このように、表面的な条件だけでなく、実際の支払額が業界水準に見合っているかをしっかり確認することが重要です。

契約条件を細かく確認

契約に関する質問も重要です。

「他社との掛け持ちは可能ですか?」
一次請けの典型的な回答:
「はい、空き時間があれば問題ありません」
「午後の時間が空くので、他社様の仕事も組み合わせられます」

要注意な回答:
「うちだけで十分稼げますから」
「専属でお願いしています」
実は仕事量が安定していないのに、他社案件を制限されるのは危険信号です。

「解約時の条件はどうなっていますか?」
要注意な契約条件:

  • 3ヶ月は解約できない
  • 解約時に30万円の違約金
  • 同業他社への移籍禁止

こういった縛りの強い契約条件があれば、それは仕事に自信がない証拠とも言えます。

まとめ:運送会社選びで失敗しないために

見破るためのポイントは、実は単純です。

「御社は一次請けですか?」
この質問への回答で、多くのことが見えてきます。一次請けなら具体的な取引先名を挙げられます。あいまいな回答は要注意です。

「どんな配送案件がありますか?」
一次請けは具体的な案件を持っています。

「色々あります」「たくさんありますよ」という回答は、契約後に仕事を探し始める可能性を示唆しています。その結果、誰も取りたがらない単価の安い仕事しか回ってこない可能性が高いのです。

「1日の売上はいくらですか?」
具体的な金額と仕事内容を示せない会社は危険です。また、「ロイヤリティなし」「手数料15%」と言いながら、実は既に単価から手数料を抜いているケースもあります。

見極めのポイントは具体性です。案件内容、仕事の流れ、支払条件- すべてにおいて、明確な説明ができない会社は避けるべきでしょう。

面談時の質問で、会社の本質は必ず見えてきます。この記事で解説した確認ポイントを参考に、慎重に会社を選んでください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次